秋から冬にかけて流行するインフルエンザですが、風邪と違って高熱が出たり体のあちこちが痛くなったりで辛い病気になっています。
幼児やお年寄りが感染すると重症化してしまうことからも、インフルエンザに対する心配が尽きることはありません。
そんな中、毎年議論されるのは『インフルエンザのワクチン効果』について。
予防接種が行われているものの、効果がないんじゃないかと論争を繰り広げています。
なかなか収拾がつかないので、今宵、ここで白黒つけようと思います!
目次
そもそもインフルエンザのワクチンってどんなもの?
インフルエンザはウイルスであり、ヒトからヒトへウイルスが伝染して、感染を強めていくタイプの病気です。
俗に言う薬は飲むことで免疫力を高めたりしますが、インフルエンザのワクチンはちょっと違います。
人間は、一度病気にかかると、その病気を体内でやっつける際に病原菌のデータを分析し、やっつけやすい武器を作って応戦します。
この武器のことを『抗体』と呼ぶのですが、この抗体は一度作られると、残しておくことができるのです。
もし2回目に同じ病気が体内に侵入しても、すでに病原菌に効く武器を作ってあるので、すぐに応戦して軽くあしらうことができるのです。
これにより、病気にならずに済んだり、もし病気の症状が出ても軽減させることができるのです。
毎年風邪を引いていたのに、いつか引かなくなるというのは、体の中に風邪の抗体がたくさんつくられることで病気にならずに済んでいるわけですね。
この人間特有の『抗体』を作る性質を利用したのが、インフルエンザのワクチンなのです。
もう感染しないくらいまでに弱めたインフルエンザのウイルスをわざと体内に取り込み、体内でインフルエンザの抗体を作ってもらうというのがワクチンの正体。
インフルエンザのウイルスに対する武器をあらかじめ提供しておく、というのが目的ですね。
こんな素敵なワクチンなのに、どうして効かないとか言われるのか?
インフルエンザのワクチンには、主に以下の3つの予防効果があると言われてきました。
- 感染予防
- 発症予防
- 重症化予防
これらの予防効果を以て、インフルエンザ予防接種と呼ばれているわけですね。
近年の研究により、これらの予防効果に疑問が出てきたのが、「効かない」と良く言われている所以なのです。
それでは1つずつ解明していきましょう!
感染予防
実はこれが一番疑わしいとされています。
インフルエンザのワクチンによって得られるのはインフルエンザウイルスによる抗体です。
この抗体の出番はいつかというと、体が異常を感知して討伐隊を結成した時です。
インフルエンザのウイルスがどのように体内に侵入するかは、以下にまとめてありますので、参考にして頂けると幸いです。
参考:【インフルエンザ】潜伏期間でもうつるのはなぜ?メカニズムがわかれば症状軽くできる!
つまり、感染する時は喉の奥にある上皮細胞とウイルスがシアル酸によって結合することで始まるため、まだ抗体の出番はないということになります。
発症予防
インフルエンザのワクチンによって、一番効果があるのはこの発症予防です。
発症とは、病気の症状になることを指します。
どうしてインフルエンザのウイルスが体内に侵入した時、高熱が出たり咳や鼻みずが出るかと言うと、体内でウイルスをやっつけようと戦いが行われる際に体が有利に戦いを進めるために行われる作戦だからです。
- 高熱が出るのは、体温を上昇することで体の免疫を高める効果があります。
- 咳やくしゃみが出るのは、体の外へウイルスを追い出そうとするためです。
- 鼻水は鼻からのウイルスの侵入を防ごうとするからなのです。
しかし、ここで既にウイルスに効果的な『抗体』という武器を持っていたらどうでしょうか。
高熱を出したり、咳やくしゃみをしなくても、あっさりとインフルエンザウイルスをやっつけることが可能となるのです。
もし完全にやっつけることができないとしても、そこまで臨戦態勢を取らずに済む、つまり発症を軽減させることができます。
重症化予防
インフルエンザウイルスの感染により発症してしまうと、特に乳幼児やお年寄りは合併症にかかる可能性があります。
これをインフルエンザウイルスによる重症化と呼ぶのですが、これも抗体により防ぐ効果が期待できます。
予防できるのは発症と重症化
以上のことから、しっかりと予防ができると言えるのは、発症予防と重症化予防の2つであることがわかりました。
感染予防はほとんど効果がないということです。
インフルエンザウイルスのワクチンにより、発症や重症化は防げるけど、感染は防げないと言うことは、ワクチンの抗体をもってしても感染はするということです。
潜伏期間中は抗体が作用して、ウイルスが増殖しないように戦ってはくれるものの、感染はしているため周りにうつしてしまう可能性があるのです。
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ワクチンが効果を出すのはいつ?そしていつまで?
危険がないインフルエンザウイルスとは言っても、インフルエンザウイルスであることに変わりはないので、インフルエンザに感染するのと同じになります。
よって、インフルエンザウイルスが潜伏するのに2日前後、長くて7日、そして発症に7日程度かかりますから、抗体ができるまでにおよそ2週間かかるということになります。
この2週間の間は、まだ抗体ができていないため、インフルエンザウイルスには感染してしまいます。
感染しないように注意する必要があります。
ちなみにワクチンは3ヶ月目でピークを迎え、だいたい5ヶ月は効果を発揮すると言われています。
1年中大丈夫というわけですし、ましてやこれからずっとワクチンを接種する必要がないわけではありません。
なぜワクチンを2回接種する必要があるのか?
ワクチンで用いるインフルエンザウイルスは、危険性を取り除いているためウイルスの力はかなり衰えています。
人間の体は面白い構造となっていて、ウイルスが強ければ強い程、強い抗体を作り上げます。
従って、ウイルスが弱い場合は抗体も弱くなってしまいます。
あまりにも抗体が弱いと、本物のインフルエンザウイルスに太刀打ちできなくなってしまうため、2回接種することで抗体を強化しているのです。
正しい知識を持って、予防接種を受けよう
いかがだったでしょうか?
インフルエンザウイルスのワクチン、そしてどうして「効かない」と言われるのか、おわかりいただけたと思います。
元凶は「インフルエンザ予防接種」という名称であり、正しくは「インフルエンザ発症と重症化の予防接種」という名称に改名しなければいけないと思います。
ワクチンを2回接種すると、およそ8割程度は防げると言いますから、やはり100%発症を抑えることは困難なようです。
インフルエンザウイルスは数年に1度新型ウイルスが登場しますし、ワクチンを作る過程で形が変形してしまうウイルスの型もあります。
このような知識を持った上で、インフルエンザのワクチンを接種するかどうか決めて頂ければと思います!
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